未成年者契約の概要

先日、大学生の息子を持つ友人からこんな相談を受けた。
自分の息子が学生ローンからお金を借りているようだが、どうしたら良いか?というものだった。
聞けば息子はまだ未成年で、親に対して何の連絡もなかったということだ。
この友人いわく、問題点が2点あるという。
1つ目は、どうやらこの息子は返済を遅れているようで、学生ローンから督促状が届いており、それを勝手に見てしまったというもの。
封筒を勝手にに見たという点で、本人に問い詰めにくいというのだ。
2つ目は未成年に親の承諾もなく貸した学生ローンが信用できない。
連絡すべきかどうか?という点だ。

なるほど、確かに親としては悩ましい問題を抱えこんでしまったものだと思った。
学生ローンからの督促状は、必ず本人宛にくるはずだ。
それを勝手に見てしまったという点は確かにマズイだろう。
2点目の未成年に貸し付ける学生ローンが信用できないという点もうなづける。
しかし、放置して良いものかどうかも心配である。

まず最初の問題からかたづけよう。
他人宛の郵便物を勝手に見る行為は、たとえ親子であろうと禁止されている。
しかし、事情が事情だしそもそも親子なのだから、まず面等向かって話し合うべきだろう。
この問題はこれで片づけるしかない。

問題はそのあとの2点目だ。
未成年者に承諾なしに貸す学生ローンが信用できるのか?という点と、連絡すべきかどうか?という点だが、一つ一つ整理して考えてみよう。
まずは未成年に親の承諾なく貸して良いのか?
という点だが、これについて検証してみよう。

●法律的には問題ないのか?
未成年者との契約というと、親の承諾を得る事が一般的である。
しかし、法律的にはそんな条文は一切ないのだ。
では、なぜ親の確認をする事が一般的になっているかというと、未成年取り消しが要因となっている。
未成年者が親の承諾なく、なした契約行為は、後でこれを取り消す事ができるのである。
しかも、「借りたお金は使ってしまって無い」と言ってしまえば、返さなくて良いのである。
むろん、無条件というわけではないが、一定の条件を除き、返済する義務がないのは事実だ。
しかし、契約時に親の同意があればこの心配はないので、貸金業者に関わらず契約時に親の確認を取る業者がほとんどとなっているのだ。

しかし、ここでもまだ疑問は残る。
学生ローンはなぜ親の承諾を取らずに未成者と契約をするのか?という点だ。
これは、実は商売上の問題と、未成年者本人のプライバヒーを保護することが要因である。
もし、いきなり学生ローンから電話がかかってきて、「おたくの未成年の学生さんにお金を貸す契約をしてもいいですか?」と電話がかかってきた場合、どこの親が承諾するだろうか?
99%は拒否するだろう。
申し込みをした学生も気の毒である。
いきなり親に電話されたあげく、借りられないのだから。
では、学生ローンはハイリスクを承知で未成年に貸しているのか?という事になるが、答えはYesである。
法的には問題ないとはいえ、未成年取り消しは学生ローンからすれば非常に脅威だ。

しかし、悲観ばかりでもない。、
ただでさえ日本人はマジメな人が多いが、なかでも学生は極めて真面目なので1桁のほんの数パーセントである。
おそらく未成年取り消しをやろうという人間は。おそらく全体の中でも1~2%程度ではないだろうか?
1~2%の人の為に、残り98~99%のまじめな学生さんに迷惑をかけたくないというのが、学生ローンの本音なのだ。
未成年者は単独で経済活動ができないというのは、確かにおかしい。
選挙権すら18才以上で与えられようとしている昨今だ。
結婚だってできるし、借金だけできないというのはおかしいのである。
もちろん、未成年者がお金を借りてはいけないという法律はないのだが、世間的な一般論としては、そういうことになっているのだろう。

ただし、未成年者は取消権を行使すれば、全て返済の義務を免れるというものではない。
まず、返済を免れる根拠として、「現存利益がある場合は返済の義務を負う」がある。
多くの未成年取り消しを主張する人は、これを乱用するわけだ。
ところが、現存利益が本当にないのかどうかは、主張する側が立証しなければならない。
これについてはいくつもの判例があり、疑いようのない事実なのだ。
さらに、生活をする上で必要なものに使った場合、取り消しすらできない。
この判例は、昔の「大審院(現在の最高裁判所のようなもの)」にあり、現在でもたびたび未成年取り消し裁判で判例として使われている。
現在の簡易裁判所・地裁・高等裁判所でも、この大審院判決を支持する判決が何例か下っている。
つまり、何に使ったのかが非常に重要であり、本当に借りたお金は飲み食いに使ってしまって手元に残っていなかったとしても、その証拠を出さなければいけないわけだから、裁判になると非常に厳しいという事だ。

話が長くなってしまったが、未成年者との単独契約は、決して違法ではないという事がおわかり頂けたはずだ。
また、学生ローンは貸金業者としての「登録」を受けた立派な貸金業者である。
未成年者に勝手に貸し付ける学生ローンに対し、連絡をすべきかどうかという点については、これまで説明してきた事を振り返って、貴方自身、自分で決めることである。
これまでの説明を理解した上で、未成年取消権を行使するも良し、しないのも良しである。
なぜなら、親は連帯保証人でもなんでもないわけだだから、返済を肩代わりする必要もないのだから、首を突っ込む突っ込まないは自由なのである。
ただ、自分の子供が、ましてや未成年が親の知らないところで借金をしたという事実に、全く無関心でいられるわけがないのも事実だろう。
最後に一つだけ言える事は、「未成年に勝手にお金を貸すような会社に、電話連絡なんかとる必要はない」という表現は、誤りであると申し伝えたい。